大阪高等裁判所 昭和30年(ラ)138号 決定 1955年11月25日
抗告人 足村一男〔仮名〕
相手方 足村正徳〔仮名〕 外一名
主文
原審判中主文第一項を左のとおり変更する。
抗告人は相手方等に対し昭和三〇年七月一一日以降相手方等がそれぞれ義務教育を終了するまでの間毎月末日限りそれぞれ一ヶ月金二千五百円宛を相手方等法定代理人親権者藤田由子方に持参又は送金して支払はねばならない。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
本件抗告は末尾添付書面記載のとおりである。
抗告理由第一について、
原審判挙示の証拠によれば抗告人の現在の所得手取り金額は毎月金一万四千四百八十円であることを認めることができる。又記録添付の戸籍謄本によれば抗告人自身も昭和三〇年五月一九日本橋マツ子と婚姻したことが認められるから同人との家庭生活維持のため出費を要することは勿論であるが、抗告人の前記所得額中より相手方等のため義務教育を終了するまでの間それぞれ毎月金二千五百円宛の扶養料を支払うことは、原審判認定の諸般の状況の下において、その額が多額に過ぎるものと云ふことはできない。
抗告理由第二点について。
抗告人が現に本橋マツ子と婚姻していることは右説明のとおりであり、他日その夫婦間に子供の出生することも考へられるけれども、抗告人主張のかような事情を以ても原審判の定めた扶養料合計五千円は未だ多額に過ぎるものと認めることはできない。
抗告理由第三点について。
抗告人は相手方等親権者藤田由子と離婚の際相手方等に対する扶養料を含めて財産分与したと主張するけれども、原審における抗告人のこの点に関する供述は之を措信し難く、他に之を認めるに足る証拠がない。
抗告理由第四点について
原審判は相手方両名のうち一人を抗告人の許に引取ることは必ずしも望ましいことでないものと判断したが、相手方等の年齢、抗告人の再婚その他原審判挙示の事情の下ではかような判断も不当とすることはできない。
以上のとおりだから抗告人主張の抗告理由はすべてその理由がない。しかし原審判は抗告人に対し相手方等の義務教育終了するまでの間扶養料毎月末日限りそれぞれ二千五百円の支払を命じたが右支払義務につき始期を示していないから、原審判中第一項を変更し、民事訴訟法第九五条第八九条に則り主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 朝山二郎 裁判官 坂速雄 裁判官 沢井種雄)
抗告の趣旨
原審判を取消し、扶養の程度又は方法について、更に相当なる御裁判相成り度く存じます。
抗告の理由
一、原裁判所はその主文記載の通り抗告人に対し、審判申立人等が義務教育を終了するまでの間同人等に毎月合計金五千円を支払はねばならないと審判されました。
二、しかし原裁判所が審判された金額は抗告人にとつては左の様な理由によつて多額に過ぎるものであると考えます。
(一) 抗告人は、原審判の如くに、審判申立人等に対して毎月合計金五千円を支払うことは抗告人の得る所得金額が多額でないために甚だ困難であります。抗告人も家庭生活を維持する必要もあります。勿論抗告人が扶養義務を負担する以上は如何なる犠牲をも払つてその履行をなさねばならないと云へるでありませうか、抗告人の現実の家庭生活からは原審判による金額は現在に於ては多額に過ぎるものであると考えます。
(二) 抗告人は審判申立人等に対して扶養義務を負担すると同様その家庭に於て、妻をも扶養せねばならない家庭生活の支柱となつているのであります。尚妻は姙娠中で出産する児の扶養をもせねばなりませんので、抗告人が原審判の金額を支払うことになれば、その妻子に対して充分な扶養も出来ないことになるのであります。
抗告人としてはその扶養について平等な履行を為し度いと思つております。
(三) 抗告人は審判申立人親権者に対しては、その離婚に際して財産を分与しているのであります。これは審判申立人等に対する扶養料とは法律上別異のものと考えられますが、抗告人は審判申立人に対する扶養料を含めて分与しておりますのでこの点御考慮願い度いと考えます。
(四) 抗告人は原裁判所に於て申立人のうち何れか一人を自己の許に引取る旨申述べております。これについて原裁判所は必ずしも望ましいことでないと判断せられておりますが現在に於ても審判申立人を扶養するについて可能な方法であると誠意をもつております。